休職していると、「休んでいる間他の人に迷惑をかけていないか」「早く戻りたい」「勉強している姿勢を見せた方がいいのか」等不安や焦りが生じやすいです。実際に、周囲を気にされてなかなか休むことに専念できない方もいらっしゃいます。スキルアップのための勉強が悪いわけではありませんが、かえって体調を悪化させる可能性があるため、休職中の過ごし方は慎重になる必要があります。
今回は、どういった過ごし方が復職への近道となるかについてお話ししていきます。
休職の過ごし方では、「ご自身の状態に合わせた活動を選ぶ」ことが重要です。
上の図のように、休職後の治療の回復に応じた時期が分かれています。
“回復初期”～“生活安定期”では、うつ状態がひどいため、治療に専念することが重要です。そのため、無理に活動するのではなく、起床・就寝時間を安定させること、食事は3食とること、入浴することといった基本的な生活を心がけてください。それらが安定するようになったら、30分程度の散歩という風に、徐々に活動範囲を広げていきましょう。
その後、“寛解安定期”～“復職準備期”では、日常の活動ができる程度にまで回復していますが、仕事を安定して働ける状態には至っていないため、就労可能レベルまでの回復を目指していきます。そのため、作業に長時間集中できる体力をつける、ストレスがかかっても自分で対処できるように練習していきます。例えば、休職の経緯を振り返り再発防止のための対策を考えたり、図書館で勉強したりするなどが挙げられます。中には、リワークプログラムを活用して、これらの準備をしていく方もいらっしゃいます。もし、スキルアップのための勉強を考えている方はこの段階で行うと、復職への準備もできて、より良いでしょう。
したがって、休職中スキルアップのための勉強を考えている方は、まずは主治医に相談して、自分はどの段階にあてはまるのかを確認しましょう。もし、段階が早いのであれば、それに応じて負荷を下げて休養に専念する方が復職への近道となります。
・一人暮らしの人が休職中に気をつけるべきこととは？
休職された時、休養に専念しても、思うように回復が進まないと感じることも多いです。特に、一人暮らしをしていると、自分1人の世界になりやすいため、気分が落ち込んでいく悪循環に陥っていく方もいらっしゃいます。今回は、一人暮らしの方が休職中に気をつけるポイントをお話ししていきます。
一人暮らしの方が休職中に陥りやすい状態としては、以下が考えられます。
- ひきこもりの状態になりやすい。
- ネガティブな考えのループに陥りやすい。
一人暮らしの方に限ったことではありませんが、うつ状態になると症状として「やる気が出ない」状態になります。そのため、一日ベッドで横になるなど、ひきこもりの状態になりやすいです。そうなると、「自分はダメな奴だ…」と感じ、更に気分が落ち込んでいくといった悪循環が起きます。
ご家族のサポートがあると、こうした悪循環から抜け出すきっかけになりますが、一人暮らしだとその悪循環からなかなか抜け出しにくくなります。
対策としては、
- 動く気になってから動くのではなく、動いてみて気分を上げていく
- カウンセリングやリワークを利用する
ことが挙げられます。
やる気が出ないからできないのではなく、渋々でもいいので動いてみることが重要です。注意したいのは闇雲に動くことではありません。例えば、ベッドから動けない状態では、動く気になれない人の方が多いと思います。その場合いきなり家事をしたり一日活動したりすることを目指すのではなく、「まずはリビングに行く」「着替えてみる」等の自分ができる行動を探してみてください。小さな行動を積み重ねていくと、徐々に達成感が生まれ、もともとしたかった家事などの活動をしやすくさせます。
これは、心理・精神療法の1つである認知行動療法における行動活性化の手法を利用しています。行動活性化では、気分を悪化させる行動を見つけ、気分を良くする行動に変えていくことを目指していきます。変えていく段階では、小さな行動に分解させ、自分ができるところから取り組んでいきます。
しかし、これらは自分一人で行おうとすると難しいです。そのため、医療機関にてカウンセリングやリワークを利用することも一つの手です。カウンセリングでは、個別に対応してもらえるためご自身の状態に応じて課題を設定し、治療をすることが可能です。また、リワークでは、規則的な生活を送ることを可能とするため、「動く」ことを促進させます。他の休職中の方とも交流ができるため、情報交換したり、お互いに励まし合い復職に向けて取り組むことができます。
一人暮らしだと、外の世界が見えづらくなるため、不安や焦りが生じやすいです。一人で抱え込もうとするのではなく、医療機関の支援などを利用して、自分に合った治療に取り組んでいきましょう。
