【認知のゆがみとは?】
私たち人間は、「出来事の考え方や捉え方、イメージ」によって感情が大きく変わります。例えば、道に迷った状況を考えてみましょう。
- 迷った状況を「どうしよう、目的地に着けないかもしれない」と考えれば、“憂うつ”な感情になるかもしれません。
- 「なんでもっと下調べしなかったのだろうか」と考えれば、“後悔”の感情になるかもしれません。
- 「迷ったならこれはこれで新しい発見をしてみよう」と考えれば、“楽しい”といった感情になるかもしれません。
上記のように、考え方は自分では気が付かないうちに日常生活において感情に影響を与えています。この「出来事の考え方や捉え方、イメージ」のことを「認知」と呼びます。
うつ状態になると、この認知がアンバランスな状態(=自分を苦しめやすくなる認知)になりやすくなることが知られています。アンバランスな状態になることは多くの人で経験されますが、うつ状態では特に顕著になります。このアンバランスな認知には一定の特徴があり、それらをまとめたものが「認知のゆがみ」と呼ばれています。
【認知のゆがみの代表的なパターン】
「認知のゆがみ」の代表的な物には以下のようなパターンがあります。
1)感情的きめつけ | 証拠もないのにネガティブな結論を引き出しやすいこと。「○○に違いない」
例:取引先から一日連絡がない→「嫌われた」と思い込む |
2)選択的注目 | 良いこともたくさん起こっているのに、ささいなネガティブなことに注意が向く |
3)過度の一般化 | わずかな出来事から広範囲のことを結論づけてしまう
例:一つうまくいかないと、「自分は何一つ仕事が出来ない」と考える |
4)拡大解釈と過小評価 | 自分がしてしまった失敗など、都合の悪いことは大きく、反対に良くできていることは小さく考える |
5)自己非難(個人化) | 本来自分に関係のない出来事まで自分のせいに考えたり、原因を必要以上に自分に関連づけて、自分を責める |
6) “0か100か”思考
(白黒思考・完璧主義) |
白黒をつけないと気がすまない、非効率なまでに完璧を求める
例:取引は成立したのに、期待の値段ではなかった、と自分を責める |
7)自分で実現して
しまう予言 |
否定的な予言をして、行動を制限し、その結果失敗する。そうして、否定的な予言をますます信じ込むという悪循環。
例:「誰も声をかけてくれないだろう」と引っ込み思案になって、ますます声をかけてもらえなくなる |
うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)
厚生労働省こころの健康科学研究事業
精神療法の実施方法と有効性に関する研究 より抜粋
【認知のゆがみの治し方、カウンセリングは効果がある?】
日々の生活で行っている「行動」や上記の「認知のゆがみ」などを取り扱いながら、ストレスと上手に付き合いながら生活することを目指す心理療法の1つに“認知行動療法”があります。
認知行動療法を行う方法としては、心療内科・精神科でカウンセラーと一緒に行う方法や、街にある心理相談室のカウンセラーと一緒に行う方法があります。また、自身で学びながら行えるようにワークブックなども販売されています。現在、心療内科や精神科に通われている方は、主治医に相談して許可を得た上で実践してみると良いでしょう。
参考
- うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)厚生労働省こころの健康科学研究事業 精神療法の実施方法と有効性に関する研究